
はじめに
Audibleで『貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」』(鈴木大介著)を聴きました。
本書は、貧困問題を“脳の機能”という視点から掘り下げた、非常にユニークな考察書です。
家庭環境や社会的要因だけでなく、認知機能の低下や高次脳機能障害が
貧困を引き起こしている可能性を示唆しています。
著者の鈴木大介氏は、貧困をテーマに複数の著作を発表してきましたが、
自身が高次脳機能障害を経験したことをきっかけに、
貧困と認知機能の関連性について新たな視点を提示しています。
著者自身が体験した「脳と貧困」のリアル
本書の中核となる主張は、一見「怠惰」や「だらしなさ」と片付けられがちな貧困状態の背景に、
脳機能の問題が潜んでいる可能性を指摘している点です。
例えば、身の回りの整理や行政手続きなどの基本的なタスクが極端に困難な人々の事例は、
単なる性格の問題ではなく、認知機能の特性が影響しているケースも考えられます。
この視点は、ニコ生配信者「七原くん」の行動パターンを思い出させました。
経済的に厳しい状況にありながら、仕事を休んだり、重要な手続きを先延ばしにしたり、
借金がありながら返済よりも無駄遣いを優先するといった彼の行動は、単なる「だらしなさ」ではなく、
脳機能の特性によるものかもしれないと考えると、新たな理解が得られました。
「怠けている」のではない。脳が邪魔をしている
本書を通して、障害というものは診断書や手帳の有無で明確に区分できるものではなく、
グラデーションのように連続的に存在するものだという認識を深めました。
健常者と見なされている人々の中にも、脳機能の特性により日常生活で様々な困難を抱えている人が
存在する可能性があります。
このような視点は、貧困問題に対する社会の理解を深め、
より効果的な支援のあり方を考える上で重要な示唆を与えてくれます。
表面的な「だらしなさ」の奥に、本人の意思ではコントロールできない要因が存在する可能性を
考慮することの大切さを学びました。
一方で感じた課題点、エビデンス不足
一方で、本書の最大の弱点は、高次脳機能障害という専門性の高いテーマを扱いながら、
著者の個人的経験と取材に基づく記述が中心で、専門的な医学的知見やエビデンスが不足していることです。
困難な状況の描写は生々しく伝わってくるものの、
解決策や対応方法については科学的根拠に基づく提案が少なく、
読者に具体的な示唆を与えるには至っていません。
専門家への取材や対談形式での情報提供があれば、テーマの信頼性と実用性が高まったでしょう。
貧困と脳機能の関連性という重要な主張を展開するためには、
個人的経験談だけでなく、科学的エビデンスによる裏付けが不可欠だと感じました。
- 貧困者の抱えている悩みを高次脳機能障害の側面から知れる
- 当事者ならではのリアルな経験談
- 高次脳機能障害を語るわりに、専門家のエビデンスが皆無
- テーマの根拠が著者の経験が中心となっていて客観性に欠ける
- 切り口は面白いけど、鵜呑みにしない方が良いと思います
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